読みもの

日本で唯一の〈こどものための古本店〉後編

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子どもに絵本を買い与えた人にとっては、思い出が詰まった本を次の子どもたちへと引き継がれていくのは幸せなことなのかも。しかも、その絵本を一冊一冊、丁寧に扱ってもらい、「誰か」の笑顔をつくる一冊になるのは、手元を離れたあとも嬉しい気持ちになれると感じました。そして、ネットショップだけでなく、移動販売車で直接手に取っての購入もできることでその人にあった購入スタイルもできる。何より、きれいな絵本を安価に購入できるのは、たくさんの本を与えてあげたい保育者にとってとても有り難いお店とも。

 

そんな「こども古本店」で寄付活動をしているというお話について、そして、絵本は中島さんにとってどんな存在かについても伺ってみました。

 

今回、保育士・保育園へ絵本を寄付する活動をしようとした思いについて教えて下さい。

元々は被災地へ絵本を送る支援活動はしているのですが、当店の活動を知り、思いに賛同して下さる方からの寄付本が6割あります。また、買い取り希望で送られてきた中から当店の厳しい販売基準に満たない本も寄付の対象になっています。昨年の西日本豪雨以降、新たな支援先が生まれてないのはとても良いことではありますが、これらの備蓄絵本を新たに有効活用出来たら…と思い、10,000冊限定で保育士・保育園へ向けて絵本の無償支援を行なうことにしました。いつもは保育士・保育園は支援の対象外としておりますが、経済的理由で子どもたちへ読ませたい本が足りない、といった不安を少しでも解消できたらと願っております。

 

 

絵本の支援活動「こども古本バンク」はどんな思いで生まれたのですか。

当店は2011年より開業しておりますが、ちょうどその年に東日本大震災がありました。開業当初で支援したい思いが出せなかったのが残念ではあったのですが、その頃、周りの方の活動内容を耳にするにつれ、自分がしたい支援は自らが行なわなくては実現できないと感じたのがきっかけです。被災された方は大切なものをなくし、大変な日々を過ごされると…。そんな中に於いて寄付という存在は大事だと思いますが、どんなものでもいいという訳ではないと聞きますし、僕自身もそう感じています。だからこそ、被災された方に気持ちよく読んでもらえるよう、販売の本と同様に、一冊ずつクリーニングを行なってから届けるようにしています。つらい状況であっても子どもたちに絵本で笑顔の時間を過ごしてもらえることを願っています。また、これまでに熊本地震で3,000冊、西日本豪雨では岡山を中心に5,000冊の支援活動を行なってきました。

 

 

ペーパーレスの時代といわれていますが、絵本は必要でしょうか。

今はDVDやアニメ、ゲームにiPad…と小さな子どもでも簡単に楽しめるものがたくさんあります。それに比べて絵本は読み聞かせする手間が必要です。でも、そんな非効率だからこそ、同じ本でもその日の気分に合わせて読み方を変えてみたり、聞き手となる子どもの反応もその時々で変わるのを直接分かる楽しみがある。そんなコミュニケーションツールのひとつとして大切に感じています。また、子ども自身も絵本を手にとり、ページをめくるワクワク感は絵本が「紙」である意味があると思っています。

 

 

中島さんにとって絵本とはどんな存在ですか。

本は基本的に一人で読むものです。しかし絵本は読み聞かせで双方向のコミュニケーションがとれる、そんな〈人と人をつなぐツール〉だと思っています。親子なら読み聞かせを通じて、言葉を覚える子や笑い声を響かせる子もいるでしょう。僕自身も読み聞かせの活動を行なっているのですが、そのときは一冊の本を通してたくさんの子どもたちと会話もしています。今はSNSでコミュニケーションが取れる時代ではありますが、だからこそ直接心が触れ合える存在に感じています。

 

 

たくさんの絵本に囲まれている中島さんですが心に残っている絵本、おすすめの絵本はありますか。

幼少期に読んだ「ぼくは王さま」という童話が好きです。あと、赤ちゃんへみせたいファーストブックとしては「だるまさん」や「がたんごとん」がおすすめですね。ほかには「ぞうれっしゃがやってきた」は戦時中の東山動物園で起きた実話を基に描かれています。ぜひ一度読んでもらいたい本ですね。

 

「こども古本店」で人に喜んでもらえる夢を叶えた中島さんにとって次の夢はありますか。

絵本のテーマパークをつくるのが夢です。今、日本では〈夢をみる〉ことが難しい時代で、大人も夢についてなかなか語りません。だから子どもも夢を見れないのかも。でも、日本を良くしていくのに夢のチカラは欠かせないと思っています。そして、難しいこと・大変なことを乗り越えた先にはいいことが待っていると自分の体験からも感じています。その世界観を絵本から感じてほしくて。僕は子どもたちに絵本のテーマパークを通して、夢は頑張ったら叶えられることを伝えていきたいです。

 

 

今回の取材で長い時間お話を伺っていたにも関わらず、終始柔らかな表情をみせてくれた中島さんでしたが、彼の絵本に対する情熱は言葉の端々からたくさん感じることができました。これからも絵本を通して子どもたちがたくさんの夢を描く時間をつくりながら、ご自身の夢である、絵本のテーマパークにお邪魔させてもらう日が楽しみになった私たちでした。

 

移動絵本屋 こども古本店


http://www.idouehonya.com/

 

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紅林 満環子

紅林満環子(知育ism副編集長)

一男一女、トイプードル一匹とともに賑やかに過ごしている日々。 最近のブームはイライラしたときに筆ペンで丁寧に文字を書くことで心が落ち着くのを発見。部屋の見えるところに『穏やか』と書いた文字が心に響いてます(笑)

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